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魂の終わり、生命の始まり

 

 

 

 

ーーー此処は、暗い森の中にひっそりと立つ、古めかしいお屋敷。
日はあまり当たらず、コウモリが集団で飛び交っている、不気味さを醸し出している、そんな雰囲気だ。


此処に住むのは、加藤 詩乃絵(かとう しのえ)という1人の少女とその両親、そしてメイドに執事。かつては、祖父母も同居していたが、心臓病、転落による骨折死により、他界したため、この世にはもう居ない。両親たちは、仕事などで多忙なため、娘に構ってあげられる時間など、これっぽっちもなかった。たまに、執事が顔を出すだけだ。彼女は、愛情を欲しがっている。

詩乃絵は元々病気がちで、外出もせず、屋敷にこもりっきりの日々が続いた。なので友達もいない。唯一の親友は、熊のぬいぐるみのプリセトラのみ。話し相手のいない詩乃絵にとっては、無くてはならない存在であった。たかがぬいぐるみだが、詩乃絵はよき理解者として扱っている。そして、喋ることはないがために、色々なことを容赦無く話しかけることが出来る。彼女は今現在6才。季節は秋。もう、小学校に通っていても良い時期だったが、体が弱いために、親は入学させることをやめた。無論、入園もさせていない。詩乃絵には、人間関係の規模が限られていた。

 

 

詩乃絵には足の持病があった。なので誰も彼女を無理に歩かせようとしなかったが、彼女はむしろ歩き出したいと思っていた。
詩乃絵「……ねぇプリセトラ、今日ね、詩乃絵1人で歩けたんだ。もちろん、壁にはぶつかっちゃったんだけど……。お母さんにも助けてもらわずに、歩けたんだ……!」
プトラ「…………」
詩乃絵「え?うん。詩乃絵も嬉しかった……。明日も、歩けるように頑張って歩くから」
プトラ「………」

ぬいぐるみのプリセトラ(プトラ)には、何でも打ち明けることが出来た。

「…お父さん、嫌い。詩乃絵の話聞いてくれないの。嫌い……」
「詩乃絵、歩けたんだ…。この話したのは、プリセトラだけ。嬉しいんだ」
「……みんなと、遊びたいな……。プリセトラ、何か喋らないの……?」
「プリセトラ、大好き……」


その頃、屋敷の前では、何やら1人の少女が興味深そうに、そびえ立つ屋敷を見上げていたが、飛び交うコウモリを見るなり、走り去ってしまった。

ある日、詩乃絵の様態は悪化した。
詩乃絵「……プリセトラ…ぁ…ッ……!」突然の激痛に悶える。

母「詩乃絵ッ!!」
父「どうした!?何が起きたんだ!?」

小さな口から漏れる少女の苦しそうな声を聞いた親が咄嗟に駆けつけた。

その後、救急車で街の病院へ


 

 

 

 

 

 

 

医者「……詩乃絵さんの右足に、悪い病気が発見されました。恐らく、切断するより他はないでしょう」
詩乃絵「………え…………」

 

 

 

 

 

 

 

6才の少女には、信じられない現実だった。

 

 

 

 

 

医者「…詩乃絵さん、大丈夫かな?」

詩乃絵「………詩乃絵、やっと……、やっと、歩けるようになったのに………」

 

無慈悲にも、彼女の右足は知らない処へ連れ去られてしまった。

 

 

詩乃絵「……プリセトラ……」
プトラ「………」
詩乃絵「……足……なくなっちゃった……」
プトラ「……」
詩乃絵「…ねぇ、プリセトラ…

…何で、詩乃絵は病気なの……!!?

詩乃絵「何で……?何で詩乃絵は病気なの!?」

ビリッ!!

プリセトラの布から、綿が飛び出す。

詩乃絵「何で!?何でなのプリセトラぁああッ!!」

右足を病気により失った少女は狂乱し、無我夢中で、唯一の理解者を蝕んでいく。この世の全てを恨んだ。それでも足りず自らも顔や首に深い傷をつけ、痛みに苛まれていった。それでも、詩乃絵は、止まることを知らず、終いには屋敷に傷をつけていく。館内を揺るがす行き場の無い悲しみ。あまりにも残酷で悲劇的な地獄絵図を大人たちは直視することが出来ない。詩乃絵の目には、何も映っていなかった。

 

 

 

間もなくして、詩乃絵は6才という若さでこの世を去った。死因は病気の悪化。医者も、手に負えないくらい、体はボロボロですっかり病んでいたのだ。

棺には、彼女が大切に抱えていたあのぬいぐるみ、プリセトラも入れられた。体には、あの日を思い起こさせる、詩乃絵の血痕が染み付いていた。



死後


詩乃絵は、失った自分の足を求めて彷徨っていた。そこを、女王様に止められる。

詩乃絵「あっ、な、何ですか……?」
女王様「…お可哀想に……。足を無くされたのですね…。そして貴方には、愛が備わっていない……」
詩乃絵「……」
女王様「ここが何処だか分かりますか?」
詩乃絵「あ、えっと……」
女王様「此処は、死後の世界です。貴方は、もう既に亡くなられているのですよ」
詩乃絵「……詩乃絵が……死んでいる…?あっ!プリセトラの体がバラバラ…!血まで……ど、して……?」

手にはあの日から変わっていない理解者。
女王様「唐突ですが、貴方を城人に任命します」
詩乃絵「……え……」
女王様「そして、貴方の死後の名前を……

エシディール・カトレ、と命名します」

詩乃絵「……エシディール、カトレ……?詩乃絵が…!?」
女王様「貴方はもう、詩乃絵ではありません。エシカです

エシカ「……エシ……カ……?」